食べなくてもマーガリンの食感がわかる!
マーガリンの食感を左右する乳化状態などの微細構造を定量的に評価する解析技術の開発
国立研究開発法人 産業技術総合研究所(以下「産総研」という)先端フォトニクス・バイオセンシングオープンイノベーションラボラトリ テイラー ジェームス 主任研究員、畔堂 一樹 招聘研究員、藤田 聡史 副ラボ長、大阪大学大学院工学研究科 藤田 克昌 教授、雪印メグミルク株式会社 塚越 詩織 研究員、田中 礼央 主査は、ラマンイメージングと機械学習でマーガリンの品質や乳化状態を化学的な定量性に基づき評価する解析技術を開発しました。
今回開発した解析手法は、マーガリンの口どけなどの制御だけでなく、品質管理、商品改良などを行う際の実用的な品質評価技術として利用することが期待されます。また、マーガリンのみならず、一般に液体成分が多く含まれる食品の検査や、製薬やその他の分野でも強力なツールになると考えられます。
なお、この技術の詳細は、2024年11月20日に「Food Chemistry」に掲載されました。
植物油脂を乳化させて製造するマーガリンは、乳化剤の種類と割合、製造工程などが食感や見た目に大きな影響を与えます。乳化の状態を制御して、オイルオフが起こらず、より滑らかな食感で、機能性が高いなど、製造者が求める品質のマーガリンを製造するための工程を最適化するには、マーガリンの微細構造や分子分布を定量的に評価する解析手法が必要です。
今回、ラマンイメージングと機械学習を用いた解析手法によって、乳化剤の含有量、製造工程やマーガリンの保存期間などの品質に影響するパラメータに対してマーガリンの微細構造や分子分布がどのように変化するのか可視化し、マーガリンの品質を化学的な定量性に基づき評価しました。その結果、油脂相に形成される水素結合がオイルオフと正の相関関係をもつことが明らかになったほか、製造工程における条件がマーガリンの微細構造と分子分布、オイルオフにどのような影響を与えるかについて、定量的な解釈を与えることができました。マーガリン製造者が品質管理、改質などを行う際の実用的な品質評価技術として利用できると考えられます。
下線部は【用語解説】参照
【用語解説】
・ラマンイメージング:
対象となる物質に光を照射したとき、散乱する光の中に照射した光の波長と異なる波長をもつ散乱光が含まれる現象をラマン散乱といい、このラマン散乱信号を2次元的に取得し画像化する手法をラマンイメージングという。ラマン散乱信号は、物質の分子振動に起因するため、波長の変化を測定することで対象物質の分子組成を知ることができます。
・機械学習:
アルゴリズムを利用してデータを解析・学習し、学習内容に沿って情報に基づいた解析を行う手法。
・乳化、乳化剤:
水と油のように混じり合わないものを分散し、均一な状態に混合させることを「乳化」といい、乳化を促進する食品添加物を「乳化剤」という。乳化剤は、水になじみやすい「親水基」と油になじみやすい「親油基」の両方をもち、水と油の界面に作用して乳化を促します。
・オイルオフ:
乳化した脂肪分と水分が分離して比重の小さい油分が染み出す現象。
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