松本市立病院との共同での研究
森永乳業は、50年以上にわたり人の腸内にすみ、様々な健康効果をもたらしているビフィズス菌の基礎研究を行っています。また、長野県松本市※1との包括連携協定のもと、機能性素材の臨床研究を長年実施し、その成果を市民の皆様の健康づくりや当社の素材開発に活用しています。
今回、松本市立病院との共同での研究※2において、ビフィズス菌M-63※3が健常な正期産児の腸内の炎症状態を軽減し、腸内細菌による有益な物質産生を高めることを確認しました。なお、本研究成果は、科学雑誌「Pediatric Research」に2025年7月22日に掲載されました※4。
1.研究背景
ビフィズス菌M-63は母乳との親和性が高く、乳児の腸内環境や健康への効果が期待されるビフィズス菌です。ビフィズス菌M-63が新生児期の腸内の炎症抑制に寄与するかどうかを確認することを目的として、研究を実施しました。本研究では、松本市立病院との共同での研究により健常な正期産児(111名)にビフィズス菌M-63(10億個/日)又はプラセボを生後1週目までに摂取を開始し、その後生後3ヶ月まで摂取いただき、腸内細菌叢や糞便中のサイトカイン※5に加え、腸内細菌が作る腸内代謝産物に与える影響を評価しました。
2.研究方法
・対象者 : 正期産(妊娠37週0日~妊娠41週6日まで)で生まれた健常な新生児(111名)
・試験デザイン : ランダム化二重盲検プラセボ対照並行群間比較試験
・試験食品摂取 : 1日当たり「ビフィズス菌M-63」10億個を含む粉末または「ビフィズス菌M-63」を含まないプラセボ粉末を生後7日以内から生後3ヶ月まで継続摂取
・評価項目 : 腸内細菌叢解析、便の理化学検査項目(サイトカインや腸内代謝産物)
3.研究結果
・ビフィズス菌M-63摂取群では、生後1ヶ月時点の腸内で、インターフェロンγ(IFN-γ)とインターロイキン1β(IL-1β)などの炎症誘発性サイトカインの減少が観察されました(図1)。
・生後3ヶ月までの腸内細菌叢を分類したところ、6つのタイプに分けられました(図2)。タイプ1-3はビフィズス菌優勢な腸内細菌叢で、タイプ4-6は腸球菌や連鎖球菌などのビフィズス菌ではない菌が優勢な腸内細菌叢でした。
・ビフィズス菌M-63摂取群では、ビフィズス菌優勢なタイプ(タイプ1-3)の分布が多く、このグループの腸内では抗炎症作用を有する代謝産物、インドール-3-乳酸(ILA)が増加していました(図3)。
図1:サイトカイン産生量(赤●:ビフィズス菌M-63群、青▲:プラセボ群)
* P
図2:腸内細菌叢の分類(1-3:ビフィズス菌優勢な菌叢、4-6:ビフィズス菌非優勢な菌叢)
図3:ILAの産生量
4.今後の展望
今回、ビフィズス菌M-63が健常な正期産児の生後初期の腸内炎症を抑制し、抗炎症作用を有することを明らかにしました。また、今回の試験で使用したビフィズス菌M-63は、2022年に米国でGRAS (Generally Recognized as Safe) ※6を一般食品向け用途と乳児向けの用途で取得し、2024年には中国で新食品原料※7に登録され、海外でも高い安全性が認められています。ビフィズス菌 M-63の特徴や研究成果を消費者やパートナー企業に正しく伝え、理解されることで製品応用の機会を増やし、海外での販売を強化いたします。森永乳業ではこれからも、人々の健康に貢献できる正しい情報と優れた素材を発信できるよう、努めてまいります。
論文タイトル・著者
「Anti-inflammatory effects of Bifidobacterium infantis M-63 during early postnatal period in term infants」
Chendong Xu, Toshitaka Odamaki, Akari Hiraku, Setsuko Nakata, Satoshi Arai, Noriyuki Iwabuchi, Miyuki Tanaka, Takahisa Tsuno, and Masahiko Nakamura
Pediatric Research (2025)